続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年05月10日

「虎に翼」寅子すごく怒る。よねが試験に落ちた要因には男装が<第30回>

「虎に翼」寅子すごく怒る。よねが試験に落ちた要因には男装が<第30回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第30回を紐解いていく。

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「私たちすごく怒っているんです」

高等試験を突破して、日本初の女性弁護士になった寅子(伊藤沙莉)。
誰もかれもがお祝いしてくれます。
記者もたくさん来て取材。ひとり竹中(高橋努)は「おもしろくねえなあ」とつぶやいていました。

家に戻るとよね(土居志央梨)が待っていました(椅子はどこから)。
猪爪家の居間にはたくさんお祝いの花が飾ってあり、一見、華やいでいますが、なぜか浮かない空気が漂います。

寅子は祝われても祝われてもなんだかモヤモヤしていて、よねは試験に落ちていますから。
よねは口述試験で、弁護士になっても「トンチキ」な格好を続けるのかと聞かれ、反論したことを明かします。おそらくそれでは受かるわけもないでしょう。

「私は自分を曲げない。曲げずにいつか必ず合格してみせる」とよね。

よねを見送った寅子の口から得意の歌「モンパパ」が溢れます。
ママが大きくて強いという歌詞に、筆者はよねが重なって見えました。直言を演じている岡部たかしさんんはこの歌のだめぽいパパに寄せているのかなとも思いました。

歌だとパパが弱くてだめな人でママが強くても咎められない不思議。この歌だけが、寅子を鼓舞する応援歌のようなものなのでしょう。

祝賀会では男性ばかりが集まっています。
記者が「日本で一番優秀な御婦人がた」と持ち上げますが、寅子が「自分がこの国で一番優秀だとはまったく思いません」ときっぱり。しかもそれは謙虚からではないとまで。寅子の気持ちのいいところは変に遠慮しないで自分の良さや言い分はちゃんと表明することです。

「志半ばで諦めた友、そもそも学ぶことができなかった、その選択肢があることすら知らなかった御婦人方がいることを私は知っているのですから」という寅子の言葉には強い実感が伴います。
この数年でどれだけの女性の仲間たちの悔しさを見てきたか。仲間たちとの場面が効果的に回想されます。

「わたしたち、すごく怒っているんです」と寅子は同席した久保田(小林涼子)、中山(安藤輪子)に同意を求めながら堰を切ったように語りだします。

「女ってだけでできないことばっかり」「もともとの法律が私達を虐げているのですから」

「生い立ちや信念や格好で切り捨てられたりしない、男か女かでふるいにかけられない社会になることを私は心から願います」

寅子は「みんなでしませんか しましょうよ」と語りかけます。久保田と中山の意思ははっきりはわかりませんが、当然、共感はしているでしょう。が、祝賀会に出ている男性陣は、穂高(小林薫)と桂場(松山ケンイチ)轟(戸塚純貴)以外はほぼ白けた顔。

たくさん記者が来ていたのに新聞記事にもなりませんでした。唯一取り上げたのは、竹中だけ。しかも好意的に(というか寅子の真意をちゃんと掲載)。彼が「面白くねえなあ」と言ってたのはどういう意味なのか。彼は寅子が世に物申すこと期待しているのかもしれません。

自分さえ受かっててっぺんとったような気分にならないヒロインっていいなあ。

寅子が心から喜べるのは、よねが好きな格好で弁護士になれるようなときが来たときでしょう。
と思いつつ、久保田と中山の立場を思うと……。

「わたしたち、すごく怒っているんです ね」と同意を求めたとき、久保田と中山の表情が映りません。ものすごく意図的に感じられるほど画角に入れていないのです。久保田と中山が寅子を支持する発言をしてほしかったし、あるいは彼女たちのそれぞれの意見も述べる場面がほしかった。寅子が会の中心になりすぎた意図を知りたい。

さて。祝賀会で穂高、桂場は寅子に好意的だった気がしますが、花岡(岩田剛典)はどうでしょう。とくに応援する動きは見えませんでした。その前に、寅子に花束を贈り、応援している旨を語ってはいます。が、「だめでも、俺がいるから」と、弁護士になれなかったら結婚すればいいという意味かと思わせる言動がありました。本来だったらときめく言葉のはずですが、寅子はどこか引っかかっているような……。

そして、寅子の記事の横には「第二次防空訓練けふ第一日」という記事が。1937年に「防空法」というものが定められ、空襲から身を守る防空訓練が行われるようになっていました。

別の意味の地獄が待っていることを示唆するようであります。

(文:木俣冬)

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